公式HPより引用
浅間大社の流鏑馬(やぶさめ)について
流鏑馬(やぶさめ)は走っている馬上から的を射る武芸の一つです。もとは、「うまゆみ」といい、のち「矢馳馬(やばさめ)」と呼び名を変え、転訛して「やぶさめ」となったという説があります。
平安時代末期ごろから、源氏の武士を中心に広がりをみせ、鎌倉時代には隆盛を極めました。また、宮中や神前にも奉納され、神事としても発達してきました。現在、的中によって年を占ったり、当的・当矢を持ち帰りお守りとする神事として各地に伝わってます。
浅間大社の流鏑馬は、社伝によると建久4年(1193)源頼朝が富士の裾野で巻狩を行った際、当大社に流鏑馬を奉納し武運長久・天下太平を祈願したことから始まるとされています。天正5年(1577)の『富士大宮御神事帳』、慶安3年(1650)の『富士本宮年中祭禮之次第』などにも記載されている800余年の伝統を持つ神事です。
流鏑馬自体は、5月5日に奉納されますが、これに合わせて様々な祭儀が行われます。これらは、本宮祭儀を行うための重要な意味があり、全部を含めて流鏑馬といえます。
富士川川原祓
5月4日 午前9時 (富士市 水神社脇 富士川河川敷)
流鏑馬祭に先立ち富士川河川敷で弓馬の祓を行います。当日は、浅間大社宮司以下神職・古式射手・大社役員・水神社役員参列のもと、富士川河川敷に斎場を設け修祓を行った後、水神社(すいじんじゃ)に正式参拝をします。
古くこの川原祓は、旧歴4月29日または28日に鈴川海浜にて行なわれていたものです。この祓いの後、5月2日 米之宮浅間神社、5月3日 富知六所浅間神社で流鏑馬が順次奉納され、本宮の祭儀へと続く一連の祭儀の始まりでした。現在は、この日が両社の例祭日となり、流鏑馬は行われなくなっています。
馬場祓
5月4日 水神社より帰着後 (浅間大社 桜の馬場)
馬上から桜の馬場を祓い清めます。奉仕は川原祓奉仕神職が行います。
末社巡拝
5月4日午後より (富士宮市 若宮八幡宮・金之宮八幡宮・富知神社)
浅間大社宮司以下神職・古式射手・大社役員が市内の各神社(旧末社)を参拝します。
古くは、3日 若宮八幡宮、4日 金之宮・富知神社と流鏑馬が奉納されていましたが、現在は参拝のみとなっています。
かむなかけの儀
5月4日 午後 (浅間大社 桜の馬場)
流鏑馬本番を前に馬を走らせる行事で、3騎が馬場を疾走します。
元々は、「かむなかけの的」といい、上方5騎の内、杉田・中里・森之越の3騎にて的を射る行事でした。挨拶と予行演習を兼ねたものとおもわれます。
流鏑馬祭
5月5日 午前9時 (浅間大社本殿)
宮司以下神職・氏子代表・甘葛太夫(あまずらだいゆう)・射手代官・古式射手・神事流鏑馬式射手・氏子・崇敬者参列のもと執行されます。
氏子代表・射手代官は毎年氏子より選出された方が奉仕されています。
また、甘葛太夫は、代々特殊神饌「甘葛」を製造奉納される深澤家の方がつとめられます。この甘葛という植物の樹液は、その名の通り甘く天然の甘味料と珍重されてきました。その昔は、葉を煎じて献じたとあり、甘茶として飲まれたようです。今では、樹液のまま3本の竹筒に入れお供えされます。なお、製法は深澤家の秘伝です。
その他特殊神饌として、端午の節句にちなみ、菖蒲(しょうぶ)・蓬(よもぎ)・粽(ちまき)がお供えされます。この特殊神饌は祭典終了後参列者に授与されます。 菖蒲・蓬は数本を束ねて奥襟に挿し、邪気をはらって以後の祭典に奉仕します。
古式射手は、神前に供えお祓いした弓矢をもって浅間大社流鏑馬式(古式)を奉仕します。
浅間大社流鏑馬式(古式)(富士宮市 無形民俗文化財)
5月5日 午前10時頃 (浅間大社楼門前馬場)
古来より浅間大社に伝わっている流鏑馬式です。地元有志による「浅間大社流鏑馬保存会」によって伝承されています。武術的要素は廃れて、儀礼的に伝承されています。
宮司以下神職・氏子代表・参列者観覧のもと射手代官・古式射手が奉仕します。
練行
5月5日 正午~午後2時頃 (市内一円 地図参照)
神事流鏑馬式に先立ち総勢100名程の奉仕者が鎌倉時代そのままの武者などに扮し、市内一円を練り歩き、流鏑馬が行われる事を知らせるとともに、奉仕者自らの士気を高めていきます。
神事流鏑馬式
5月5日 午後3時~午後4時頃 (浅間大社 桜の馬場)
拝殿参拝の後、流鏑馬を奉仕します。射手以外の諸役は氏子代表と同じく氏子より選出された方が奉仕されます。鎌倉武士さながらの勇壮かつ華麗な流鏑馬を奉仕するのは、齋藤道場一門の方々です。
馬場入りの後、所役が所定の位置につき、馬場元役が紅の大扇を掲げ、馬場末役が白の大扇をかざしてこれに答えるといよいよ流鏑馬の始まりです。
一ノ射手は揚扇を行い疾走し二つの的を次々に射抜く姿は見事というほかありません。三ノ射手までが正射手で、その他を平武者といって区別してます。違いは装束にありますので注意して見て下さい。15~20騎ほどの流鏑馬がおこなわれ終了となります。
縁起物
甘葛 (あまずら)
特殊神饌として供えられる昔の甘味料。もとは葉を煎じ甘茶として飲んだようです。現在は、樹液のままお供えされ参列者にも授与されます。授与の際、盃等は使わず樫の葉に数滴たらし、舐めるようにしていただきます。味は甘さとわずかですが舌を刺すような刺激がある独特のものです。製法は代々甘葛太夫をつとめる深澤家の秘伝となっています。
菖蒲(しょうぶ)・蓬(よもぎ)・粽(ちまき)
5月5日端午の節句にちなみ菖蒲・蓬で屋根を葺く他、神前に特殊神饌としてお供えします。菖蒲・蓬はさまざまな薬効があり、風呂に入れると邪気をはらうと伝えられています。粽も健康を祈願したもので、病難除けとして天井に飾るところもあるそうです。